低炭水化物ダイエットとは?
皆さんは、ケトジェニックダイエットというのをご存じだろうか。このケトジェニックダイエット、実は色々なバリエーションがあるのだが、歴史は古く1920年に遡るらしい。当初は癲癇の治療に取り入れられたものだ。勿論、癲癇の治療のための食事療法なので、ダイエットが目的ではなかった。一躍有名になったのは1972年にアメリカのアトキンスというお医者さんが、開発した食事療法で、これは一大ブームとなった。内容としては、一日に摂取する炭水化物を20g以内に抑え、タンパク質と脂肪の摂取量を増やすという食事療法である。今では低炭水化物ダイエットと言うのが分かりやすいと思うのだが、微妙に違うところもある。例えば一日に摂取する炭水化物が60g以内になっていたりする。それぞれが痩せると主張している。色々あるので、ここでは低炭水化物ダイエットで一括りにする。細かい違いは別稿で書きたいと思っている。
さて、この低炭水化物ダイエットがもてはやされた理由は次の通りである。
- 即効性がある
- 炭水化物以外の食べ物なら比較的自由に食べられる
- リバウンドの影響が少ない
こんなところであるが、まず即効性から、見てみよう。低炭水化物ダイエットを実施したら、三日で2㎏痩せた!とか、一か月でマイナス7㎏達成とか、そんな話しばかり出てくる。そして、低炭水化物ダイエット推進派の意見はどんどんと過激になっていき、遂には「カロリー制限ダイエットはウソだった!」とか、「運動しても痩せない!」などという意見まで出てくる始末。この辺のところは前項でも書いた通りなのですが、いささか言い過ぎの感がする。例えば日本肥満学会が発表しているダイエット方法にはどんなことが書いてあるかというと次の通りだ。
- 25 kcal/kg × 標準体重/日以下にすること
- 糖質、タンパク質、脂肪は厚労省の指針に沿ってバランス良く摂ること
- 酒は飲まないこと
とある。低炭水化物ダイエット推しの人達は、このような標準的ダイエットでは痩せないとしている、若しくは、たいして痩せないとしている。そして、痩せたいのなら低炭水化物ダイエットしかない、という。私は彼らの言葉を聞いて疑問に思うのだ。それがこれだ。
低炭水化物ダイエットで失敗した人はいないのか
彼らの中で、ダイエットに成功した人は出てくる。まあ、これは当然だろう。しかし失敗談は、ほとんど出てこない。例え出てきても、健康に良くない、というような事ばかりで、痩せないというワードは出てこないのだ。
冒頭書いた通り、低炭水化物ダイエットは昨日今日、発表された理論ではない。少なくともアトキンスの頃からなら、すでに50年が経過した理論だ。しかし、それでもなおダイエットの優先的方法になっていないのだ。しかし、低炭水化物ダイエットで成功するという意見は根強い。実際にこのダイエット法で成功した人やこの理論を実証しているブロガーもいる。しかし、よくよく考えてみると、
そもそも低炭水化物ダイエットをしてる人って、カロリーも控えてるんじゃないの?
炭水化物を食わなきゃOK、とばかり、ケンタッキーフライドチキンを毎日バカスカ食べて痩せたとか、いきなりステーキで毎日500gのステーキ喰って、痩せた、なんて話し聞いた事がない。私が思うに、低炭水化物ダイエットを実行した人は、その人の普段の生活からごはんとパンをなくしただけじゃないの?と思ってしまう訳ですよ。勿論、腹は減るから、サラダチキンとか食べる訳だ。ごはんの代わりに。そりゃ痩せるよね。何しろカロリー少ないだから。しかも、この低炭水化物ダイエットは長期間になると、(例えば一年とかのスパンで見ると)他のダイエット方法との差が出なくなるらしいのだ。
勘違いなんてこともある
まあ、逆に言えば短期間なら、他のダイエット方法よりも痩せる可能性が高いとも言える。但し、この短期間での効果も実は少し怪しい部分もあるのだ。それはグリコーゲンの存在だ。グリコーゲンは今まで摂取した炭水化物の余剰分を貯めておくシステムで、主に肝臓と筋肉が貯金箱の役割を果たしている。この貯金は約2,000kcal分あるらしい。ダイエットを始めると先ず体はグリコーゲンを使いだす。低炭水化物ダイエットなら、炭水化物は殆ど摂取しないために先ずこのグリコーゲンを使いだす。2,000kcalなら、3日もあれば使い果たすだろう。まあ、それだけならどうということはない。問題はこのグリコーゲンは水と結合して蓄えられているのだ。その割合は1:3~5とある。つまり1gのグリコーゲンには3g~5gの水がくっついているのだ。低炭水化物ダイエットを開始して、このグリコーゲンを例えば400g使ってしまうと体内からは400g×3=1,200gの水分が体から抜けるのだ。つまり、2日で2㎏から3㎏くらいは痩せられることになる。低炭水化物ダイエットを始めてすぐに痩せた!と喜んでいるのは実はこの水分が抜けたからかもしれないのだ。ダイエットの目的は何かと問えば脂肪を減らすことである。水分ではない。勿論、体のむくみを取るとか別の理由がある場合は水分が抜けるのは良い事だろうが、多くの場合、目的は脂肪だ。低炭水化物ダイエットを始めてすぐに3㎏痩せたとしよう。やったー!と喜んで食事を元に戻せば即座に太るのだ。イヤ、もしかすると貴方はこう考えるかもしれない。「3㎏の脂肪って27,000kcal分だから、しばらくは好きなモノが食べられる!」そして、調子に乗っていると以前より太ってしまうことだってある。勘違いとは、結構怖いものなのだ。
さて、そんな勘違いを乗り越えて低炭水化物ダイエットを続けたとしよう。するとすぐに次の試練がやってくる。低炭水化物ダイエットの1日に摂ってもよい炭水化物の量だ。一般的には一日に60g以下と言われている。これは相当少ない量だ。ごはんを、お茶碗一杯も食べられない量で、ハッキリ言って甘いものやパンやごはんは一切食べられないと思って間違いない。和食の根菜類の煮物なども無理だ。お昼に気軽に外食という訳にもいかない。コンビニの棚をみてもそれらしい昼食を取ろうとしても不可能に近い。ファミレスでチキングリルを注文しても付け合わせのポテトは食べられないし、ライスなど、もってのほかなのだ。ハンバーグは肉だからOKなどと思ってはいけない。つなぎにパン粉が使われており一般的な200gのハンバーグの中には約25gの炭水化物が含まれている。吉野家に行っても貴方が食べられるのは牛皿とかサラダとか、納豆とかになってしまう。こんな食事法を出来るのは、相当にストイックな人とか、ボディビルダーとか、競技者とか、何か特別な目的のある人だけだと思う。ごく普通の生活をしている貴方が気軽に出来るようなダイエットではないのだ。
低炭水化物ダイエットのいいところ
私が思うにこのダイエット法の唯一の救いは、居酒屋に行くと結構食べられるものが増えるところだ。焼き鳥、ホッケの開き、枝豆、冷ややっこ、モズク酢、唐揚げ、等々。さらに、低炭水化物ダイエットでは少しならお酒もOKらしい。これは左党の方には堪えられないハズだ。ダイエットを頑張りつつ、月に1~2回くらいは、お酒も飲める。むしろ人によっては、これならダイエットが続けられると思う人もいるはずだ。そう、ダイエットの成功はストレスと上手く付き合うことなのだ。食べるという本能を抑える行為なのだから当然と言えば当然の事だがストレスは必ず発生する。そのストレスに我慢が出来ずにダイエットを断念する人はとても多いはずである。そんなダイエッターの強敵であるストレスと、どう上手く付き合うかが一つのテーマになってくる。
さて、ここまで低炭水化物ダイエットの大変さを話してきた。しかし、ダイエット法は何も低炭水化物ダイエットだけではないのだ。急激にやせてリバウンドを起こすよりは、むしろ長期間かけて脂肪を落とすような方法が良いような気がするのは私だけでないだろう。それこそがカロリー制限法なのだ。この方法の良いところは第一に簡単に始められることだ。
今までの食事を少しだけ減らしてあげれば良いだけだ。人間の体はカロリー計算通りにはいかないことも多いが、それでも食べなければ痩せるしかないのだ。そもそも貴方は食べ過ぎていたのだ。そうでなければ痩せる必要などないのだから。そんな食べ過ぎの貴方の生活を、まず第一に見直すべきだろう。ダイエットに成功したら、また元の生活に戻そうなんて考えていると、必ずリバウンドを起こすと思ったほうが良い。常々、私が主張しているように、ダイエットとは生き方を変えることなのだ。貴方の心の持ち方ひとつで貴方の体は肥満にも美しくもなれるのだ。
日本人の為のダイエット
ある調査によると、今から80年前の人達の摂取カロリーと現代人の摂取カロリーは実は、ほとんど変わらないという。炭水化物、タンパク質、脂肪のうち、その構成比の中で増えているのは脂肪分なのだ。経済活動の増大の物流が大きく発展したおかげで、この80年間に日本人の食卓はとても豊かになった。その結果、脂肪分を多く摂れるようになったのだ。この調査によると、炭水化物は減っているのに脂肪は約4倍ほど多く摂っている。つまり80年前の人は高炭水化物食だった。しかし今よりも肥満は少なかったし、糖尿病の患者も少なかった。勿論、80年前である。交通も家電も発達していないから、人々は今よりも良く動いたはずだ。だから同列に比較はできないが、それでもこの時代に肥満が少なかったというのはヒントにはなるはずだ。日本人に適したダイエット法があるのではないかと考えている。次回以降、そんなところを掘り下げたいと思っている。
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